「麻布台に住みたい」
そう思うカップルは少なくありません。高級住宅街として名高い麻布台は、都心の一等地に位置し、洗練された街並みが魅力的です。特に2023年に誕生した「麻布台ヒルズ」により、さらに注目度が高まっています。
しかし実際に住むとなると、思わぬ落とし穴が待ち受けているかもしれません。15年間不動産賃貸仲介業に携わってきた経験から、麻布台エリアの知られざる住環境の真実をお伝えします。
麻布台エリアの基本情報と最近の変化
麻布台は東京都港区に位置する高級住宅街です。六本木や麻布十番といった人気エリアに隣接し、都心の利便性と閑静な住環境を兼ね備えた場所として知られています。
2023年11月に開業した「麻布台ヒルズ」は、このエリアに大きな変化をもたらしました。約8.1ヘクタールという広大な敷地に、オフィス、住宅、ホテル、インターナショナルスクール、商業施設など多様な機能が集約されています。
このプロジェクトは「Modern Urban Village」(緑に包まれ、人と人をつなぐ「広場」のような街)というコンセプトで開発され、約6,000㎡の中央広場を含む2.4ヘクタールもの緑地が広がっています。
さらに、日本初進出のラグジュアリーホテル「ジャヌ東京」や、ミュージアム、約150店舗の商業施設も含まれており、単なる住宅地ではなく「都市の中の都市」として機能しています。
麻布台ヒルズの誕生により、このエリアの住環境は大きく変わりました。しかし、その変化がカップルにとって必ずしもプラスになるとは限りません。
カップルにとっての麻布台の魅力
まずは、麻布台がカップルにとって魅力的な点を見ていきましょう。
麻布台の最大の魅力は、都心にありながら緑豊かな環境です。特に麻布台ヒルズの開発により、中央広場や果樹園、桜並木など、様々な緑の空間が生まれました。
カップルにとって、都会の喧騒から離れてリラックスできる緑の空間は、デートスポットとしても日常の癒しの場としても貴重です。
都心で自然と触れ合える環境は、ストレス社会を生きる現代のカップルにとって何物にも代えがたい価値があります
また、文化的な施設も充実しています。麻布台ヒルズ内には延床面積約9,000㎡のミュージアムやギャラリーがあり、「街全体をミュージアム」とするコンセプトのもと、様々な場所でアートに触れることができます。
カップルで訪れる美術館やギャラリーは、会話のきっかけになり、お互いの感性を知る良い機会になるでしょう。
さらに、国際色豊かな環境も魅力の一つです。大使館が多く集まるエリアであることから外国人居住者も多く、本格的な各国料理店やヴィーガン、ハラル対応の飲食店なども充実しています。
食の好みが異なるカップルでも、それぞれが満足できる選択肢が豊富にあるのは大きなメリットです。
カップルにとっての麻布台の落とし穴
しかし、麻布台には魅力だけでなく、カップルが住む上で考慮すべき落とし穴もあります。15年間の不動産仲介経験から、多くのカップルが見落としがちなポイントをお伝えします。
まず最も大きな問題は、家賃の高さです。麻布台は港区の中でも特に家賃相場が高いエリアです。例えば、麻布台ヒルズ内の住宅は1LDKでも月額30万円を超えることがほとんどです。
カップルで折半するとしても、一人当たり15万円以上の家賃負担は決して軽くありません。特に20代〜30代の若いカップルにとっては、将来の資金計画を考えると大きな負担になります。
次に、生活コストの高さも見逃せません。高級住宅街であるため、近隣のスーパーやコンビニ、飲食店なども比較的価格帯が高めに設定されています。
日常の買い物や外食で少しずつ余分な出費がかさみ、気づけば生活費が予想以上にかかっているということがよくあります。
通勤アクセスの問題
麻布台は一見交通の便が良さそうに思えますが、実はカップルにとって意外な落とし穴があります。
最寄り駅は東京メトロ日比谷線の神谷町駅や都営大江戸線の赤羽橋駅ですが、どちらも徒歩10分前後かかります。雨の日や疲れている時には、この距離が意外と負担になります。
また、カップルの場合、二人の勤務先が異なる方向にあることが多いものです。麻布台からは六本木方面や銀座方面へのアクセスは良いですが、新宿方面や渋谷方面へは乗り換えが必要となり、意外と時間がかかります。
六本木エリアに勤務する二人暮らしの人の住居調査によると、東急田園都市線や小田急線、東急東横線、東京メトロ東西線沿線に住む人が多いという結果が出ています。これは、お互いの通勤の利便性を考慮した結果と言えるでしょう。
プライバシーの問題
高級住宅街ならではの問題として、プライバシーの確保が難しいという点があります。
特に麻布台ヒルズのような大規模複合施設では、セキュリティは万全である反面、エントランスや共用施設で顔を合わせる機会が多く、ご近所との距離感の取り方が難しいことがあります。
カップルの場合、特に同棲や婚約段階では、周囲の目を気にする方も少なくありません。高級マンションでは、管理人や警備員の目も厳しく、友人を招いたり、少し賑やかに過ごしたりすることに制約を感じることもあります。
実際、麻布十番駅周辺の二人暮らし向け物件の調査によると、プライバシーが確保できる中規模マンションの方が、超高級マンションよりもカップルからの人気が高いという結果も出ています。
カップルに最適な住環境とは?
では、カップルにとって本当に最適な住環境とはどのようなものでしょうか。麻布台と比較しながら考えてみましょう。
カップルにとって重要なのは、二人の生活スタイルに合った環境です。特に考慮すべき点として、以下のようなものが挙げられます。
通勤アクセスのバランス
二人の勤務先へのアクセスがバランス良く確保できる立地が理想的です。
例えば、二人の勤務先が反対方向にある場合、その中間地点や複数路線が利用できる駅の近くを選ぶと良いでしょう。具体的には、渋谷、新宿、恵比寿、目黒などのターミナル駅周辺や、中央線と山手線が交差する四ツ谷、飯田橋などが人気です。
麻布台は確かに交通の便は良いですが、特定の方面(六本木、銀座方面)に偏っているため、二人の勤務先によっては必ずしも最適とは言えません。
生活コストとのバランス
住居費と生活費のバランスも重要です。家賃が高すぎると、日常生活が圧迫されてしまいます。
カップルの場合、一般的に手取り収入の3分の1程度を住居費に充てるのが理想とされています。例えば、二人合わせて手取り60万円なら、家賃は20万円程度が目安になります。
麻布台の場合、この基準を大きく超えてしまうケースが多く、生活にゆとりを持ちにくいという問題があります。
プライベート空間と共有空間のバランス
カップル生活では、二人で過ごす時間も大切ですが、それぞれの時間も必要です。
間取りとしては、リビングと寝室の他に、小さな書斎やワークスペースがあると、お互いの時間も確保しやすくなります。最近では、在宅ワークの増加に伴い、このような間取りの需要が高まっています。
麻布台の物件は確かに設備や内装は高級ですが、コンパクトな間取りが多く、二人がそれぞれの空間を持つには少し窮屈に感じることもあります。
一方で、少し郊外に目を向けると、同じ家賃でより広い間取りの物件が見つかることが多いです。例えば、中目黒、三軒茶屋、自由が丘などは、おしゃれな街並みと適度な広さの物件が両立できるエリアとして人気があります。
麻布台に住むべきカップルの条件
とはいえ、麻布台が全てのカップルに不向きというわけではありません。どのようなカップルなら麻布台での生活が合うのでしょうか。
まず、経済的に余裕のあるカップルには麻布台は理想的な住環境と言えます。具体的には、二人合わせての年収が1,500万円を超えるようなケースです。
このくらいの収入があれば、麻布台の家賃負担も無理なく、周辺の高級店での買い物や食事も楽しめるでしょう。
また、二人とも六本木や銀座方面に勤務しているカップルにとっては、通勤の利便性が高く、メリットが大きいと言えます。特に、金融業や外資系企業に勤める方々には、このエリアは非常に便利です。
さらに、都会的な洗練された生活を重視するカップルにも向いています。文化的な刺激や国際的な環境を日常的に楽しみたい方々にとって、麻布台は理想的な場所と言えるでしょう。
ライフステージも考慮すべき
カップルのライフステージによっても、麻布台が向いているかどうかは変わってきます。
例えば、結婚したばかりの共働きで子どもがいないDINKS(Double Income No Kids)の時期は、麻布台のような都心の利便性の高い場所が向いています。仕事に集中しながら、休日は文化的な刺激を受けられる環境は魅力的です。
しかし、子どもが生まれる予定があるカップルの場合は、少し異なる視点が必要です。麻布台ヒルズにはインターナショナルスクールがありますが、一般的な保育園や小学校へのアクセスを考えると、必ずしも最適とは言えない面もあります。
また、子育て世代には公園や児童館などの施設も重要ですが、麻布台は大人向けの環境が中心で、子ども向けの施設は比較的少ないという特徴があります。
麻布台以外のカップルにおすすめのエリア
麻布台が必ずしも最適でないカップルには、どのようなエリアがおすすめでしょうか。不動産のプロとして、いくつかのエリアをご紹介します。
中目黒・代官山エリア
おしゃれな街並みと適度な静けさが共存するエリアです。カフェやセレクトショップが多く、休日の散策も楽しめます。
東横線と日比谷線が利用でき、渋谷や銀座方面へのアクセスも良好。家賃相場は麻布台より2〜3割ほど抑えられるため、同じ予算でより広い物件が見つかりやすいです。
特に、クリエイティブな職業のカップルや、おしゃれな環境を好む方々に人気があります。
恵比寿・広尾エリア
麻布台に近い高級感がありながらも、生活感のあるエリアです。スーパーやドラッグストアなど生活施設が充実しており、日常生活の利便性が高いです。
JR山手線と日比谷線が利用でき、都心各所へのアクセスが良好。家賃相場は麻布台よりやや抑えめで、バランスの取れた住環境と言えます。
特に、ビジネスパーソンのカップルや、都心の利便性と生活のしやすさの両方を求める方々におすすめです。
三軒茶屋・学芸大学エリア
世田谷区の中でも特に人気の高いエリアです。おしゃれな飲食店が多く、若いカップルに人気があります。
田園都市線が利用でき、渋谷へのアクセスが良好。家賃相場は麻布台より3〜4割抑えられるため、余裕を持った生活が可能です。
特に、将来的に子育てを考えているカップルや、適度に都会的でありながらも落ち着いた環境を求める方々におすすめです。
四ツ谷・飯田橋エリア
JR中央線と東京メトロ複数路線が利用でき、どの方面へのアクセスも良好なエリアです。特に二人の勤務先が異なる方向にある場合に便利です。
神楽坂や四谷三丁目など、落ち着いた雰囲気の街並みも魅力。家賃相場は麻布台より2〜3割抑えられます。
特に、通勤の利便性を重視するビジネスパーソンのカップルや、和の雰囲気を好む方々におすすめです。
まとめ:カップルの理想の住まい選びのポイント
麻布台は確かに魅力的なエリアですが、全てのカップルに最適というわけではありません。最後に、カップルが住まいを選ぶ際のポイントをまとめておきましょう。
まず、二人の生活スタイルや価値観を共有することが大切です。都会的な刺激を求めるのか、落ち着いた環境を好むのか、休日はどのように過ごしたいのかなど、お互いの希望を話し合いましょう。
次に、現実的な予算設定が重要です。住居費だけでなく、生活費や将来の貯蓄なども考慮した上で、無理のない家賃設定を心がけましょう。
そして、二人の通勤ルートのバランスも忘れてはなりません。どちらか一方だけが長時間通勤になると、生活リズムの不一致や疲労の蓄積につながります。
最後に、将来のライフプランも視野に入れることが大切です。今は二人だけでも、将来子どもが生まれる可能性や、親の介護が必要になる可能性なども考慮しておくと、長期的に満足できる住まい選びができるでしょう。
麻布台は確かに素晴らしいエリアですが、カップルにとっての理想の住まいは、必ずしも「最も高級な場所」ではなく、「二人の生活に最も合った場所」なのです。
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